「神経を取るしかない」と言われたことはありませんか?
- OMI .LLC

- 1月9日
- 読了時間: 5分
「根管治療は成功したけど10年後に歯を失った、、、」そんな患者さんを何人も見てきたと多くの歯科医師は言います。 根管治療の「成功率」と歯の「生存率」は全く別物です。
目次

「神経を取るしかない」と言われたことはありませんか?
歯医者で「虫歯が深いので神経を取りますね」と言われた経験がある方は多いのではないでしょうか。
これまで歯科治療では、大きな虫歯がある場合、歯の神経(歯髄)をすべて取り除く治療が一般的でした。もちろん、それが必要なケースでは今でも行われている治療です。
しかし近年、「できるだけ神経を残す」という考え方が広まりつつあります。その代表的な治療が『VPT(Vital Pulp Therapy:歯髄温存療法)』です。

歯の「神経(歯髄)」って、実はどんな役割があるの?
歯の神経と聞くと、「痛みを感じるだけのもの」というイメージを持たれがちですが、実はそれだけではありません。
歯髄には
・歯に栄養を届ける
・歯の内部の状態を感知する
・歯を内側から強く保つ
といった大切な役割があります。
神経が生きている歯は、しなやかで割れにくく、長く使える可能性が高いとされています。

従来の治療法:なぜ神経を全部取っていたのか?
では、なぜ今まで神経を取る治療が主流だったのでしょうか。
理由の一つは、感染を確実に防ぐためです。
虫歯が神経まで達すると、細菌が入り込み、強い痛みや腫れを引き起こすことがあります。以前は、神経を残すと再び痛みが出るリスクが高いと考えられており、「全部取ってしまう方が安全」という判断が一般的でした。
これは当時の技術や材料を考えると、決して間違いではありませんでした。

VPT(歯髄温存療法)とは?簡単に言うとどんな治療?
VPTとは、感染していない神経を部分的に残す治療です。
虫歯に侵された部分だけを取り除き、健康な歯髄を守ることを目的としています。
すべての神経を残す場合もあれば、悪くなった部分だけを取り除いて、残りを保護する場合もあります。
「取るか、全部残すか」の二択ではなく、歯の状態に合わせて判断する治療と言えます。

VPTの最大のメリット:歯の寿命を延ばせる可能性
VPTの最大のメリットは、歯の寿命を延ばせる可能性があることです。
根管治療をした大臼歯は歯髄のある歯と比べて7.4倍喪失リスクが高いという研究データがあります。
神経を失った歯は、時間とともに水分が減り、もろくなります。その結果、歯の根が割れてしまう「歯根破折」が起こりやすくなります。歯根破折は、残念ながら抜歯になることが多い状態です。
神経を残すことで、こうしたリスクを下げ、将来的に自分の歯を使い続けられる可能性が高まります。

「痛みは大丈夫?」VPT治療中・治療後の実際
「神経を触る治療=痛いのでは?」と心配される方も多いですが、治療中はしっかり麻酔を行いますので、痛みはほとんどありません。
またラバーダムを用いますので喉の奥に水が溜まって呼吸しづらくなることもありません。
治療後に一時的にしみたり、違和感が出ることはありますが、多くの場合は数日から数週間で落ち着きます。
もちろん、強い痛みが続く場合には、速やかに対応が必要です。

すべての虫歯にできるわけではありません
VPTはとても有効な治療ですが、すべてのケースに適応できるわけではありません。
すでに神経が失活している(生きていない)場合、大きく感染している場合や、強い自発痛が続いている場合などは、従来通り神経を取る治療が必要になることもあります。
大切なのは、「残せる可能性があるかどうか」を正確に診断することです。

VPTが成功するために大切な5つのポイント
VPTを成功させるためには、いくつか重要なポイントがあります。
1つ目は正確な術前診断。
2つ目はマイクロスコープを用いた強拡大視野下での歯髄の視診。
3つ目は細菌を極力入れないラバーダムを用いた清潔な治療環境。
4つ目はMTAセメントでしっかり封鎖すること。
5つ目は詰め物を適切に接着、詰め物のふちからの菌を入れないこと。
これらが揃ってはじめて、神経が回復し、安定した状態を保つことができます。

神経を残す治療は「様子を見る」ことも治療の一部
VPTは、治療して終わりではありません。
治療後に定期的にチェックを行い、神経が元気な状態を保てているかを確認することが大切です。
経過観察も含めて、VPTという治療は成り立っています。

これからの歯科治療は「取る」から「守る」へ
歯科治療は、ただ悪い部分を取り除く時代から、できるだけ歯を守り、長く使う時代へと変わってきています。
VPTは、その考え方を象徴する治療法です。
「神経を取るしかない」と言われたときでも、別の選択肢があるかもしれないことを知っておくだけで、歯の未来は変わる可能性があります

まとめ
神経のない歯の予後はどうしても悪いことは歯科医師の中でも共通認識です。
VPTは神経を全て取ることを避けられますので、歯の長持ちに直結する治療だといえます。
全ての虫歯治療が適応になるわけではありませんがケースに応じて行う必要があると考えます。
曽根あらい歯科医院では開院以来、マイクロスコープとラバーダムを用いて適応症例ではVPTを行うことで、従来通りであれば神経を全て取られていた歯の神経を守ってきました。日本国民の寿命が伸びていく中で一般的な歯科の保険診療の耐久年数は短いので患者さんの寿命に釣り合ってないことを日々の診療で感じております。その中でこのVPTは歯根破折を回避できますので非常に価値を感じております。

参考文献
Caplan DJ, Cai J, Yin G, et al.: Root canal filled versusnon-root canal filled teeth: a retrospective comparison of survival times. J Public Health Dent, 65(2) : 90-96, 2005.
泉英之:治る歯髄治らない歯髄歯髄保存の科学と臨床:クインテッセンス出版(東京), 2018.
AAE Position Statement on Vital Pulp Therapy. J Endod,47(9) : 1340-1344, 2021.
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